写真著作権と肖像権

著作権は著作物の創作の時に始まり、保護期間は作者の死後70年間存続*1します。著作権の不正使用や紛争を無くするために、協会では使用者側との契約を勧めています。「写真寄稿覚書」や「写真賠償保険(ネガ保険)」などを使うことで、使用者側とのトラブルを未然に防ぐ方法を指導しています。 また、写真作品(プリント)に著作者名(撮影者名)を印字して渡すことや、印刷物などの使用媒体に著作者名(クレジット)を明記することおよび、使用した作品の返却、使用条件などを契約することを勧めています。

*1 著作権の保護期間は1998年に「死後50年」に改正され、2018年12月30日から、TPP整備法による著作権法の改正により死後70年に延長されました。

著作権法のあらまし

著作権という権利は、ごく大雑把にいうと、小説を書いたり作曲したり写真を撮ったりした作品を、出版したり放送したりして利用するにあたって、その作者に法律によって認められる権利で、財産的な権利と人格的権利があり、この法律を著作権法といいます。
また小説や音楽、美術(写真も含む)のような、著作権を認められるものを著作物といい、それを創作した人を著作者といいます。
著作権法は出版物や実演、レコード制作、放送などに関して著作者や実演家の権利を定め、これら文化的な所産の公正な利用と、著作者や実演家の権利保護を図り、文化の発展をうながすための法律です。

著作権法では、著作物とは「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう」と定義しています。
単なる機械的な複製(複写など)はもちろん、技術的に苦心したものであっても創作的に(人まねではなく)表現していなければ、著作物として保護されません。
また、内心で考えているとかアイディアの段階では著作物とはいえず、ほかの人が見ることのできるように”固定”されていなければなりません。(ネガ・ポジ・プリント等)

クラシックの曲をジャズ化したり、小説を脚本にしたり、脚本を映画化したものなど、ある著作物を原作として新たな創作性を加えたものは、原作とは別に著作物として保護されます。著作物である写真にモンタージュしたり、コンピュータグラフィックスのように合成したものも同様です。これを二次的著作物といいますが、既存の著作物に用語の変更など、多少の修正を加えただけでは、二次的著作物とは認められません。
なお、このような二次的著作物を創作する場合には、原作者の許可が必要ですし、二次的著作物を利用する(使う)場合には、二次的著作物の作者の許可と原作者の許可とが必要です。

新しい発明をしたとき、これを特許庁に登録しなければその発明を独占的に利用する権利(特許権)は発生しません。しかし著作者の権利(著作権)は、登録その他どんな手続きも必要なく、著作物を創作したそのときから自動的に著作者に著作者人格権と著作権(財産権)が発生します。
そして著作権には保護期間が定められていて、個人の制作した写真の著作権は文芸・学術・音楽などと同様、作者の死後70年となっています。その期間を過ぎると財産権としての著作権は消滅します。

自分の作品が勝手に内容を変えて使われたら、誰でも不愉快でしょうし、場合によっては苦痛に耐えられないこともあるでしょう。
著作者人格権は著作者だけ(一身専属性)のもので、他人に譲ることはできません。作者の死後は遺族や、作者が遺言で指定したもの及び罰則が著作者の人格的利益守ります。
著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権の三つを内容としていますが、荘厳な宗教音楽をストリップの伴奏にするなどのように、作品に直接手を加えなくても、作者の名誉を傷つけるような使い方をすることも著作者人格権の侵害になります。

1) 公表権

作品を公表するかしないかを自分で決める権利です。机の引出にしまってある原稿は初めから公表しないつもりで書いたのか、気に入らなくてボツにするのか、あるいはまだ加筆するつもりなのか、それは作者本人にしかわからないことです。それを無断で公表するのは作者に大変な精神的苦痛を与える恐れがあるので、その公表を決めるのは作者だけであると規定されています。一度公表された作品にはこの権利は及びません。
画家が絵を売った場合、買った人がその絵を展示して公表することに同意していると見なされます。なお、生前に公表されなかったいわゆる遺著(作)は、作者が生きていたらその公表を拒むだろうという事情がなければ、著作権者(遺族など)の許可を受けて公表してさしつかえありません。

2) 氏名表示権

氏名表示権は、作品(著作物)の公表にあたって作者(著作者)名を表示するか表示しないかを自分で決める権利です。公表権と違って、作品を初めて世に出すときだけでなく、作品を使う(著作物を利用する)たびに問題になりますが、使う側は特に注文がついた場合は別ですが、いちいち作者に伺いをたてる必要はなく、すでに作者が表示している例にならって表示するならばさしつかえありません。例えば『銭形平次捕物控』を出版するときに作者名を「野村胡堂」とするのはかまいませんが、本名だからといって「野村長一」とすることは許されません。

3) 同一性保持権

同一性保持権は、作品の内容やタイトルを勝手に変えたり、トリミングをさせない権利です。小説にしろ写真にしろ、作品には作者の人格が反映されているのですから、作者の意向に反して変えられることがないようにして、その人格的利益を保護するのが主旨です。
たとえ変えた方がよくなると思っても、誤字脱字の訂正などは別にして、作者の同意のない改変(作者の死後は意を害すると認められる改変)は許されません。

著作権は、同じ著作者の権利でも著作者人格権と違って、著作物を出版したり放送したりして利用する権利です。
著作権は、著作物の利用に伴って使用料などの収益を得るものであり、またそれを目的としているともいえるので、土地の所有権や物品を売ったときにその代金を請求できる権利などと同様、財産的に価値がある権利(財産権)です。著作者人格権とは違って、他人に譲渡したり、子供が相続したりすることもできます。
写真に関係する著作権の内容を次にあげておきます。

印刷、写真、複写、録音、録画などの方法で著作物を形のあるものにそのまま再製する権利で、著作権のなかでもっとも基本的な権利です。

著作物を公衆に対して発信する排他的な権利です。
インターネット上(ホームページやブログ、SNS、データ配信など)での著作物の使用や配信、テレビ放送などが該当します。
公衆向けであれば、無線・有線を問わずあらゆる送信形態が対象となります。公衆とは「特定の小人数」以外を意味します。個人間のメールのやりとりなどは含みません。

美術の著作物と未発行の写真の著作物に限って認められる権利で、これらを原作品によって公に展示する権利です。展覧会や通行人などが見られる屋外の場所などに展示することに働く権利で、自宅の応接間に絵を掛けておくような場合には認められません。

他人が作成した既存の著作物をもとに作成した二次的著作物を利用する権利です。二次的著作物の著作者はその著作権を取得しますが、そのもととなった著作物(原作)の著作者も、これと同じ権利を持つということです。

1)私的使用のための複製

個人的にまたは家庭内など、限られた範囲で使用するとき、使用するものが複製することができます。

2)図書館等における複製

図書館などの利用者の求めに応じ、公表された著作物の一部分を一人につき一部コピーする場合。

3)引用

引用とは自分の著作物の中に他人の著作物を使うことです。公表された著作物は引用して使うことができます。報道、批評、研究その他の目的が正当な範囲内であって、公正な慣行に合致するものでなければなりません。
その他、教科書への掲載、学校教育番組の放送、学校その方か教育機関における複製、試験問題とした複製、営利を目的としない上演等があります。

ニュースを報道する場合、事件の中に見られる著作物は、写真またはビデオに映っても著作権侵害ではない。

写真や美術の原著作(オリジナル)を譲渡した場合、所有者(または所有者の同意を得た者)はその所有権に基づいて公に展示をすることができます。著作者には展示権がありますが、所有権の行使として展示することは著作権に抵触しないことになります。しかし「写真や美術の原作品を屋外の場所に恒常的に設置する場合」には著作権者の許諾が必要となります。

建築物や公園にある銅像などを写真撮影したりテレビ放送したりすることを認めるもので、建築物をまねて建てたり、銅像などのレプリカを作ったり、絵はがきとして売ったりするような場合には、著作権者の許可が必要です。

観賞用でない解説・紹介用の小冊子に美術や写真の著作物を掲載することは侵害ではありません。

著作権は著作物の創作の時に始まり、作者の死後70年間存続します。(2018年12月30日から、TPP整備法による著作権法の改正により著作者の死後50年から70年に延長)

著作権はその全部または一部を譲渡することができます。ただし、全面的に譲渡される場合でも、特に契約しなければ、翻訳権などの二次的著作物に関しての原作者の権利は保留されます。

著作権Q&A

ここでは、公益社団法人日本写真家協会が著作権の普及と啓発を目的に、日常の写真に関わる著作権の基本や疑問点等に関して解り易く、具体的な「著作権Q&A」として解説いたしました。 近年のコンピュータ技術の急速な発展やインターネットの普及にともない、写真表現や情報発信の形式等も飛躍的に拡大してきました。このような社会状況の下では、写真に関わる著作権についても、紙媒体としての印刷物等だけでは解説できなく、Web上での写真の扱いも含め、今後もより実社会との密接な関連事項について、加筆、追加を予定しております。

A:著作権は、写真家(撮影者)が写真を創作した時点で、自動的に発生します。(第51条)
したがって、登録とか申請といった手続きは、一切必要ありません。(無方式主義)(第17条-2)

A:写真に限らずわが国での著作権の保護期間は、創作の時に始まり、作者の死後70年間存続します。(2018年12月30日から、TPP整備法による著作権法の改正により著作者の死後50年から70年に延長)

A:
○世界各国の著作権保護期間一覧
死後100年: メキシコ
死後99年: コートジボワール
死後80年: コロンビア
死後75年: グアテマラ、ホンジュラス
死後70年: 日本、アメリカ、アイスランド、アルゼンチン、アルバニア、オーストラリア、シンガポール、スイス、ノルウェー、ブラジル、ロシア等
欧州連合(EU)加盟27ヶ国
イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スペイン、スウェーデン、ブルガリア、ポーランド、ポルトガル、デンマーク、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、フィンランド、ルーマニア等
————————————————————————–
死後60年: インド、ベネズエラ
死後50年: アラブ首長国連邦、アルジェリア、イラク、インドネシア、ウズベキスタン、エジプト、オマーン、カナダ、カメルーン、カンボジア、キューバ、サウジアラビア、台湾、ニュージーランド、パキスタン、マレーシア、ヨルダン等
○著作権保護期間が著作者の死後50年未満の国
死後30年: イエメン、イラン
死後25年: ジプチ、スーダン
○著作権法未制定の国
死後0年: アフガニスタン、ソマリア等

A:写真家に無断で写真そっくりに絵を描いて公表すれば、著作権(翻案権・変形)の侵害になります。

(27条)

A:絵画を複写しても、そこに新たな著作権は発生しません。
単にカメラのメカニズムを介して絵画を忠実に再製すること自体に新たな創作性がなく、著作物とは認めがたいという理由からです。
一方、彫刻などの立体物の撮影にあたっては、カメラやレンズの選択にはじまり、アングル、照明など、写真家の創意工夫があるとされ、著作物として保護されます。(第2条-1) 彫刻作品などの著作物の撮影や写真の使用には、著作者(権)者の許諾が必要です。

A:屋外の場所に恒常的に設置(固定)されている美術の著作物は、自由に撮影し、公表することが可能です。使用範囲は「いずれの方法によるかを問わず利用できる」とされており、撮影した写真の加工(翻案)やインターネット上での公表(公衆送信)も可能です。屋外の場所とは公有地、民有地に関わらず、一般公衆に解放され、入場制限がない場所を意味します。しかし「専ら美術の著作物の複製物(美術の著作物が主題の写真)の販売を目的」とする場合には、著作者の許諾が必要となります。

A:建築物を撮影した写真は「方法を問わず自由に使うことができる」とされているため、出版物などへの掲載は著作権侵害になりません。公道などからの撮影と写真の利用は自由ですが、私地内では管理者が決めたルールに従う必要(施設管理権)があります。写真を商業目的で使用する場合には他の権利など(商標権などの知財権や不正競争防止法など)でのトラブルが発生する可能性があり、注意が必要です。

A:原則としては、著作権は撮影者に帰属します。
賞金や賞品を出したからといって著作権が、主催者側に移るものではありません。
ただし、応募要項の中には、「著作権は主催者に帰属します」と記載されているものもあり、著作権法の本義と異なった解釈をされている場合もありますが、応募要項が一種の契約として解釈されることもありますから、応募にあたっては十分な注意が必要です。
また、応募要項によって主催者側に著作権が移った場合でも、著作者人格権は著作者(撮影者)にありますから、無断で作品の改変や、作者名の変更などをしてはいけないことになっています。(第19条、第20条)

※フォトコンテストガイドラインの詳細については、一般社団法人・日本写真著作権協会ホームページ「フォトコンテスト主催者の皆様へ」をご参照ください。(https://www.jpca.gr.jp/

A:原則としてその法人が著作者となります。
ただし、契約、勤務規則その他に別段の定めがあれば、その限りではありません。(第15条)

A:契約によりますが、原則として著作権は、写真家に帰属します。
出版社や依頼者が撮影に必要な経費の全額負担をしたからといって、別段の契約がない限り、著作権が依頼者側に帰属するということはありません。(第2条-1)
(平成5年1月25日・東京地裁判決・ブランカ事件)

A:著作物を、放送、有線放送、インターネットで伝達することを著作者に占有させる権利の総称です。(第23条1-2)
公衆送信権とは、インターネット等により、著作物を公衆向けに「送信」することに関する権利(第23条)であり、公衆向けであれば、無線・有線を問わず、あらゆる送信形態が対象となります。
また、「自動公衆送信」とは、「公衆送信のうち、公衆の求めに応じ自動的に行うもの」をいいます。利用者(公衆)がパソコン等を使ってブラウザ上で写真、文章やイラストなどの著作物を表示したり閲覧したりできることも、インターネットサーバーが「公衆の求めに応じて自動的に送信している」しくみです。(第2条9-4)

送信可能化権」とは、写真等の著作物をインターネット等のサーバーにアップロードして公衆に送信し得る状態にできる権利で、実際の送信行為の有無にかかわらず、著作物をサーバー等にアップロードするだけであっても著作者の許諾が必要になります。したがって、著作者に無断でアップロードされた著作物に一度もアクセスがなかった場合でも権利侵害が発生します。(第2条9-5)

ネット上で北海道のすばらしい流氷の写真を見つけました。プリントアウトしてみると流氷の上にアザラシの姿があり、雄大な自然に魅了され、額装して部屋に飾りました。遊びに来た友人がすばらしい写真だけれど、これは著作権侵害になるのではと気にしていました。このような場合、著作権侵害になりますか?

 

A:この質問は、私的複製の範囲にあたり、全く問題ありません。(第30条)
ただし、無断でプリントアウトして友人に配布、頒布などをおこなうと写真家の著作権を侵害することになり、損害賠償請求などの訴訟になる可能性があります。事前に写真家の許諾が必要になります。(第21条)

A:写真を友人や親戚などの限られた範囲で楽しむことには問題はありません。
しかし、多くのテーマパークにおけるキャラクタ-は「私的利用の範囲を超えた使用」を禁止しています。有名テーマパークのキャラクターや建築物には、ライセンス契約上の肖像権や所有権があり、また、ブログやホームページへの掲載は、不特定多数の人に同時に閲覧できる状況にすることであり、営業的な付加価値を侵害することになります。各テーマパークでは私的利用を超えた写真の使用にあたって、それぞれ規定を設けているようですから、テーマパークの広報室に確認してください。(肖像権、商標権、不正競争防止法)

A:この条約は、著作権における国際的保護の基本として最も重要であり、世界の著作権法といえるものです。
1886年(明治9年)ヨーロッパ諸国を中心に著作権にかかわる国際的ルールを定めた条約です。2009年現在、世界の164カ国が加盟しており、わが国は1899年、アメリカは1989年に加盟。特色は、内国民待遇の原則と無方式主義です。(著作物を作成した時点で自動的に著作権が発生し、登録等は不要。)

A:この条約は1952年、国内法の関係でベルヌ条約を批准できなかった諸国のために、ベルヌ条約を補完するものとして国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が提唱して決められたもので、ユネスコ条約とも呼ばれているものです。
ベルヌ条約創設の頃、アメリカを中心に中南米の諸国はすでにパンアメリカン条約を制定しており、自国の著作権法との差があったため当初ベルヌ条約に参加せず、著作権の発生に登録主義(方式主義)をとっていました。
(c)マーク表示によって方式主義国でも保護され、保護期間は25年です。日本は1956年に条約を批准。1971年のパリで改正が行われ、1977年に改正条約が締結されました。
近年は、世界のほぼ全ての国家が世界貿易機関(WTO)の加盟国であり、WTO協定の附属書である知的所有権に関する協定(TRIPS協定)を受け入れています。このため、万国著作権条約はその重要性がなくなったとされています。両条約加盟国では、ベルヌ条約が優先します。

A:ベルヌ条約加盟国では、内国民的待遇の原則に従って、わが国の著作権法が適用されます。
例え著作権保護期間が日本の保護期間より長い欧米諸国の著作物であっても、日本の保護期間の死後70年が適用されます。

A:学校教育の目的上、必要と認められる限度内で、教科書へ掲載することができます。(第33条)
ただし、著作者への通知と文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければなりません。

(第33条1-2)
一般教材では、事前の承諾と通常の使用料の支払いが必要です。

A:原則的には同一人です。(第14条)
ただし、著作権は譲渡や相続ができますから、異なる場合もあります。
この場合でも、著作者人格権は一身専属性のため譲渡や相続はできず著作者にありますから、作品の利用にあたっては、著作者への配慮が必要になります。

A:著作権法には賠償金を算定する方法は定められていますが、具体的な額が定められているわけではありません。
通常の使用料金を算定基準とすることが多いのですが、勿論場合によっては慰謝料も請求できます。また、反復使用に対して値引きをすることが一般的でも、侵害の場合にはそのような値引きを考える必要はありません(第114条)
不当な侵害に対して、通常の使用料だけで引き下がらねばならないのはなんとも釈然としないところです。立法論として、本来の損害の倍額とか3倍額とか認める国もあります。現在のわが国の賠償制度でこれをそのまま持ち込むのは無理ですが、さまざまな工夫をして最大限の損害賠償請求をする工夫がされています。

写真家のための契約マニュアル

概要

constract_sampleデジタル・ネットワーク時代となり、著作者の望まない契約や以前になかったトラブルが増えています。その多くは優越的地位を利用した契約や、契約に名を借りて無償での著作権譲渡や権利の制限などを求めているものです。そこで、当協会の著作権委員会において、著作者側からの視点で契約書の雛形と契約に関するマニュアルを作成しました。 写真家の仕事は100人100様のため、一つの雛形だけで十分対応できるものではありませんが、それぞれのスタイルに合わせてご活用ください。

インデックス

インデックスは、契約マニュアル全体を補うとともに、できるだけ簡易に説明したものです。 著作権契約に関する一般的な解説は、「著作権契約の基礎知識」をご覧ください。

署名をすると、契約に書かれている事項に同意したことになります。しっかり読み、趣旨を明確にし、全てに同意できる場合のみ署名をします。一部でも納得できなければサインをしてはいけません。
また、企業側が用意した契約書にサインを求められる機会も増えていますが、中には写真家側に不利な条項が書かれていることもあるため注意が必要です。
例えば、「最終合意条項」とか「唯一の条項」といった類の条項がさり気なく入れられていることがあります。これらの意味は、「交渉過程でのいかなる合意も、最終的に契約書本体に盛り込まれていない限り、合意の効力はない。」というものです。他には「取り消し不能かつ全世界で永久に有効」とした条項もあります。おかしなものはおかしなものと疑問を呈することも必要です。

いつ、どこで、誰が、誰に、何を、どのようになどを明示するよう心掛け、当事者が同意したもののみ記載しましょう。

(5W3Hの参考例)
When いつ(期限、期間、約束の時間)
Where どこで(場所、行き先)
Who 誰が、誰に(担当)
What 何を(課題、目的)
Why なぜ(理由)
How どのように(手段、方法、仕上げ方法)
How many どのくらい(規模、数量)
How much いくら(予算、対価、係る費用)

法的には当事者の同意があれば口頭での約束も有効ですが、後で立証できなければ無意味です。後のトラブルを避けるためには、覚書にない事項はe-mailなどで希望事項を送り、相手の「了解」「同意」等をe-mailで得て記録を残しましょう。覚書の一部を変更したい場合も同様です。

契約の後、同意内容を変更するには、相手の同意が必要です。例えば、撮影内容や掲載場所の変更、あるいは何らかの追加などに同意した場合は、その都度e-mailなどを用いて「変更」と「同意」の事実を記録として残しましょう。

撮影に関する契約の法的性質は、準委任契約に相当します。請負契約と異なって、仕事の最終形について予め具体的に決まってはいません。写真家は現場で最善の作品となるように努力することが、準委任契約の核心です。業務委託契約や委託契約などと表現しても法的性質は変わりません。
撮影前の準備、撮影、後処理(調整、プリントなど)、写真の入稿、利用許諾、報酬や対価の算定、支払い方法など全てを覚書作成の際に取り決めることは困難でしょうが、決められる範囲でいいですから、利用目的や条件、予算、対価、係る費用を誰が負担するかなどをしっかりと確認し、同意のあるもののみ記載します。さらに、撮影日時、寄稿・返却方法、利用期間、利用場所(掲載媒体)、請求先、支払い方法なども確認しましょう。前述の通り、具体化してゆくプロセスをe-mailなどで残すことが重要です。

著作物の利用にあたり、利用許諾、譲渡などがありますが、多くの場合、利用の範囲と期間とその対価を定めて依頼人が利用できる許諾で十分です。そして、同一または類似の写真についてその期間、独占的な使用を許す場合(この場合大半でしょうが)には、「同一写真については同期間中他に利用させない。」などの文言を特記します。契約に際しては対価、氏名表示などの条件なども確認しましょう。
もし譲渡に同意すると、自分で撮った写真であってもその写真の利用が出来なくなります。さらにその後の類似する創作活動が事実上できなくなるなどの影響が生じる場合もあります。また、「著作者人格権を行使しない」とする著作者の権利を制限する規定に同意すべきか否かは、注意が必要です。著作者の積極的な同意がなければ人格権が優先します。

詳細契約書の雛形(JPS書式)

撮影や寄稿を依頼する方へのお願い

  • 事前に、依頼したい内容、利用目的と範囲、条件、予算、対価などを具体的に写真家に伝えるとスムーズな交渉が出来ます。
  • 契約書や覚書には当事者が同意できることのみ記載してください。
  • 著作者の権利を制限したり財産部分の譲渡を求める場合は、その範囲を必要最小限にとどめるとともに、事前にその合理的な必要性を説明したりその対価を提示してください。一般に譲渡や権利制限を求める場合は、許諾より多くの対価の支払いを伴うものです。
  • 依頼撮影はその性質上、法的には準委任契約に相当します。業務委託契約や委託契約、請負契約などの名称を用いるのは避けたいものです。
  • 下請法にも従ってください(発注書の義務、支払い期日など)。ただし、写真は製品などの一般的な成果物とは異なり、作品であり著作物です。
  • 寄稿された写真の所有権は、依頼人やその利用者にはありません。使用後の写真は速やかに返却し、作業に用いた複製物およびデジタルデータは消去・廃棄してください。
  • 掲載物の送付をお願いします。また、掲載場所にアクセスできるようご配慮ください。

利用許諾の範囲や二次利用に関して

著作物などの利用にあたっては、事前に明確に許諾されている範囲が許諾の全てです。
その範囲を越える利用に際しては、別途、利用の目的や条件、対価などを示した上で、許諾の申請をしてください。
例えば、紙媒体で使ったものを電子化したり、Webやネットワーク、放送、通信、展示などで使う場合は、具体的な利用条件(利用目的、媒体/場所、期間、数量、価格、許諾に対する対価など)を事前に示し、それぞれの利用ごとの許諾と対価の支払いが必要です。
また、具体的な予定はないが、将来、電子書籍、Web、ネットワーク、放送、通信、展示、データベースなどで使うかもしれないというような場合は、その利用が具体的に決まってから許諾申請を行うか、事前に利益の配分などを取り決めるといいでしょう。
その後の二次利用、例えば増刷や再発行、再放送、URLの異なる場所での掲示や期間を越えたアーカイブ利用などは、それぞれ事前の利用許諾と対価の支払いを伴うものです。
仮に、利用許諾のないまま使うと、著作権侵害となりますのでご注意ください。

契約書の雛形(JPS書式)ダウンロード

覚書の雛形は、著作権契約に特化したものではありません。依頼撮影および写真の寄稿の際の契約に関するものを扱っており、不毛なトラブルの回避を目的としています。 なお契約に際しては、契約と著作権に関する知識がある程度必要なため、契約の前にインデックスと、「著作権契約の基礎知識」をぜひご覧ください。

○写真の依頼撮影・寄稿覚書
○書き方・見本

複写式が必要な方はJPS事務局で購入できます。(A4複写式50組)

【注意】雛形をアレンジ(改変)して使用する際は、雛形の中にある 「公益社団法人日本写真家協会 書式」 の文章は削除してください。改変したものは 「公益社団法人日本写真家協会 書式」 ではなくなります。
 「著作権契約の基礎知識」PDF
寄稿(きこう)とは、返却されることを前提として写真や文章やイラストなどの著作物を原稿として、引渡すことを指します。同義語として、入稿、送稿、受け渡し、納品、納入、提供、貸し出し、送信、投稿、アップロードなどがあり、依頼撮影には寄稿が含まれていますので、その場合の写真が返却されることを前提としています。 なお寄稿された写真の所有権は、写真家にあります。依頼人やその利用者に所有権は移転しません
*注) 寄稿覚書作成にあたっては、当協会顧問弁護士、北村行夫氏(虎ノ門総合法律事務所 所長)の監修をいただいております。また、「著作権契約の基礎知識」に関しては、文化庁著作権課の許諾のもと「誰でもできる著作権契約マニュアル」を写真家向けにアレンジして使わせていただきました。

著作権研究

日本写真家協会会報から抜粋
PDFファイルを開くにはAdobe Readerが必要となります。Adobe Readerは、こちらのページで無料でダウンロードできます。
Adobe ReaderはAdobeの登録商標です。

著作権関連書籍紹介